「以上!ヘレナちゃんの毒舌集でした」

と、局長は言いました。

「あぁ、心が痛い…。とても心が痛いよ」

「…私も、思い出したら恥ずかしいです…」

と、局長と副局長は言いました。

何故局長の心が痛み、副局長が恥ずかしがるのか理解出来ません。

「いずれも、私の欠点に繫がる事象だったとは思えません」

「そこだよ、君の欠点は!」

「何処ですか?」

「自分の欠点を指摘されて、その欠点を欠点だと認識出来ないところ!」

と、局長は言いました。

…!

現在私の痛覚機能は遮断しているので、全く痛みは感じませんが。

もし私の痛覚機能が稼働していれば、このとき私は、「衝撃を受ける」という現象を体験していたのかもしれません。

更に。

「突き詰めて言うと、ヘレナちゃん、君の欠点は『人の感情が理解出来ない』ところだ!分かる?」

と、局長は聞きました。

優秀だと評価された私ですが、残念ながら。

「分かりません」

と、私は答えました。

「そうだろうね」

「それが、私の欠点だと言うんですか?」

「その通り。だから、人を傷つける発言を無意識にしてしまう。君のその、人の気持ちが分からない点が、君の一番の欠点だ」

と、局長は言いました。

成程、ようやく理解出来ました。

しかし、理解すると同時に、私は疑問を当然の抱きました。

「久露花局長。質問をしても宜しいでしょうか」

「どうぞ」

許可を頂きました。

「局長は、私が『人の気持ちが分からない』ことを欠点だとあげつらいますが、そもそも私は人ではないので、人の感情が理解出来るはずがありません」

「…」

局長は沈黙しています。

「人間が私のような人造人間、アンドロイドを造るのは、私達が人間以外の視点から物事を見聞きし、判断し、行動することを期待しているからだと教わりました。つまり私は、人間的な感情を理解してはいけないのです。私が人間的な感情を理解、ましてや共感などしてしまえば、私は私の存在理由を否定することになってしまいます」

「…」

局長は沈黙しています。

「従って、私が人間の気持ちを理解出来ないのは当然であり、そもそも理解してはいけないのです。それとも局長には、私が人間の気持ちを理解することで、何か得をすることがあるのでしょうか」

「…ないね」

と、局長は答えました。

やはり、私の判断が正しいと理解してもらえたようで、何より…、

「得をすることはない。でも、君が人間の気持ちを理解することで、私の…私達の、研究の目的が達成される」

と、局長は言いました。

「…意味不明です」

と、私は言いました。

「ふむ…。どうやらヘレナちゃんは、大きな勘違いをしているようだね」

と、局長は言いました。

…勘違い?

私が?

「説明をお願いします亅

「勿論。私達『Neo Sanctus Floralia』の研究者はね、君が思うような、ただのアンドロイドを造りたい訳ではないんだ」

と、局長は言いました。