廊下に出ると、確かにそこには、今今朝全校集会で見たばかりの生徒会長が立っていました。

しかも、周囲にはこちらの様子を窺うように、ちらほらとギャラリーがこちらをチラチラ見ています。

あ、この人、よく見たら。

以前期末試験の成績上位者リストを見ていたとき。

こっそり、掲示板を盗み見ていた男子生徒ですね。

そして今日はまた、こうして高校一年生の階にわざわざやって来て。

一体何の用なのでしょうか?

「私に何か御用でしょうか?」

と、私は生徒会長に訪ねました。

一介の生徒に過ぎない私に、生徒会長が何の用かと思ったら。

「あ、えぇと…久露花さん、だったよね」

と、生徒会長は言いました。

「はい、いかにも久露花瑠璃華ですが」

「良かった。君に話したいことがあるんだけど」

「何ですか?」

と、私は聞きました。

私だけでなく、こっそり私と生徒会長の会話を盗み聞きしているギャラリー達も、耳をそばだてていました。

「俺、初めて見たときから君のことがずっと気になってたんだ。良かったら、俺と付き合ってくれないか?」

「何処にですか?」

「えっ」

と、生徒会長は言いました。

まるで意表を突かれたかのような顔で。

ついでに言うと、周囲のギャラリーも唖然としていました。

理解不能です。

付き合ってくれと言うから、何処に付き合えば良いのか聞いただけです。

何処に付き合うのかも分からず、承諾する訳にはいきません。

もしかしたら、「ちょっとヒマラヤ登山に付き合ってくれない?」と言われるのかもしれないじゃないですか。

そうしたら、雪山グッズを揃えなければなりませんし、すぐにOKとは言えません。

すると。

「え、えぇと…。く、久露花さん」

と、生徒会長は戸惑ったように言いました。

「何でしょうか」

「一応聞いておくけど…よく一緒にいる、あのクラスメイトの車椅子の人」

「奏さんのことですか?」

「あ、そんな名前なの?その人とは、付き合って…いや、恋人同士な訳じゃないんだよね?」

と、生徒会長は聞きました。

何ですか。その確認するみたいな言い方は。

「はい。恋人ではありませんね」

と、私は答えました。

私と奏さんは親友です。親友と恋人はイコールではありません。

「だったら良かった」

と、生徒会長は安心したように言いました。

…何が良かったんですか?