アンドロイド・ニューワールド

待ち合わせ時間の、15分ほど前になって。

奏さんが、車椅子を押してやって来ました。

以前使った「やっほー」は、やはり久露花局長特有の挨拶だそうなので。

ここは、普通に挨拶するとしましょう。

「おはようございます、奏さん」

「うん、おはよう瑠璃華さん。遠目からでも、『あぁあそこにいるの、間違いなく瑠璃華さんだろうなぁ』って思ってたら、案の定だったよ」

と、奏さんは笑顔で言いました。

遠目からでも、私を識別してくださるとは。

さすが親友ですね。

「色々聞きたいことがあるんだけど、まず、最初の質問良い?」

「はい、何でもどうぞ」

「今朝、何時から待ってた?」

「日の出と共に、参戦させて頂きました」

「そっか。それで、そのデイパックの中には何が入ってるの?」

「サバイバルナイフと、除草剤2リットルペットボトル×3本ですね」

「そうなんだ。それで、そのガスマスクはどうしたの?」

「これは防塵マスクです。万が一毒草が、毒の粉を撒いたとしても、呼吸可能なように」

「成程。もうツッコミのバーゲンセールで、俺は何を言ったら良いのか分からないよ」

「ありがとうございます」

「うん。褒めてはないけどね」

と、奏さんは言いました。

さて、ようやく揃ったので。

「さぁ、奏さんもこの防塵マスクをどうぞ。二人分持ってきたので」

「ありがとう。今回は忘れないよう、全部駅のロッカーにしまっておこうね」

と、奏さんは笑顔で言いました。

…結果。

私は、ナイフと除草剤が入ったデイパックと、

口につけていた防塵マスクと、羽織っていた空調服と手袋を、駅のロッカーに残し。

つなぎに長靴姿という軽装で、奏さんと共に電車に乗ることになりました。

折角用意してきたのに、とても残念です。