廊下の…掲示板、ですか?

何か面白いものでも、貼り出されているのでしょうか。

「…停学処分にされた生徒の告知とかですか?」 

「…そんな訳ないでしょ…」

と、奏さんは言いました。

違うんですか。

面白いものと言ったら、それくらいしかないかと思ったのですが。

「他に、何か面白いものでも?」

「面白いって…。瑠璃華さんあのね、そもそも停学処分の告知は、何も面白くないから」

「そうですか。変わってますね奏さんは」

「瑠璃華さんにだけは、言われたくない言葉だなぁ…」

と、奏さんはボソッと呟きました。

…それで、結局のところ。

「何があるんですか?」

「今回の期末試験。成績上位者リストと順位が、廊下に貼り出されるんだよ」

と、奏さんは言いました。

成程。

期末試験で成績が上位だった生徒の名前が、順位順に貼り出されているんですね。

理解しました。

理解しましたが、納得は出来ない制度です。

結果は確かに大事ですが、期末試験のように、勉強することが目的のイベントでは、高い点数を取った者を賞するのではなく。

いかに点数が低かろうとも、試験に至るまでにどれだけ努力したかに応じて、表彰するべきですね。

人間の能力には、生まれたときから差があるのですから。

中にはいるでしょう?物凄く努力して、ようやく50点取れた生徒や。

全然勉強なんかしてないけど、ちょっと要領が良いから、何となくで50点くらいは取れる生徒が。

両者は確かに同じ点数ですが、その点数に至るまでの過程には、大きな差があります。

私もそうです。

私は元々『新世界アンドロイド』として、様々な知識を蓄えています。

そのお陰で、高校一年生の期末試験レベルの問題なら、軽く解いてしまえますから、全問正解でしたが。

奏さん含め、他のクラスメイトの皆さんは、努力に努力を重ねて、ようやく今の点数があるのです。

ならば、私としては、そちらの方を賞してあげて欲しいですね。

私自身は、ちっとも努力などしていないのですから。

しかし私の場合、佐賀来教師からカンニング疑惑をかけられていましたし。

結局、不正行為を行ったとして、失格とみなされている可能性もありますが…。

それはどちらでも良いことです。

などと考えながら、奏さんと共に廊下に出ると。

生徒達が、掲示板の前でたむろして、何やらわいわい騒いでいます。

そんなに気になるのでしょうか。他人の成績が。

それとも、あわよくば自分が成績上位者として名前を挙げられていないか、ワンチャン狙っているのでしょうか。

たかだか高校一年生の一学期の期末試験の結果で、一喜一憂するのは馬鹿馬鹿しいと思います。

人生は長いのですから、こんなところでこんな風に賞されても、彼らの人生の中において、特に重要なことではありません。

まぁ、自分の成績が良ければ、モチベーションアップにも繋がりますから。

やはり、あわよくばリスト入りしていたい、と思うのかもしれません。