アンドロイド・ニューワールド

結果。

炭水化物に炭水化物を挟むという組み合わせは、案外悪くないことが分かりました。

これなら、白米の上にマッシュポテトも、案外良い組み合わせになるのかもしれません。

機会があれば、試してみたいところです。

そして、私の味蕾も、世の中には塩味という味があるのだと確認したので。

私の味覚機能の調査も、同時にこなすことが出来て、私は満足です。

そういえば、飲み物を買うのを忘れていましたが。

今更自動販売機の列に並ぶのも面倒なので、このまま教室の自分の席で、焼きそばパンを食べるとしましょう。

幸い私は、水分の摂取も必要な、

「あれ〜?電波ちゃん何してるの?」

と、湯野さんの悪癖お友達の一人が言いました。

私としたことが、思考中に話しかけられて、しばし反応が遅れてしまいました。

何をしているのか、と問われましたね。

見ての通りですが、尋ねてきたからには、返事をしなければならないでしょう。

「焼きそばパンというものを、食べているところです」

「あれ?アンドロイドは食べ物要らないんじゃなかったの?」

と、湯野さんの悪癖お友達が聞きました。

何故か、わざとらしいほどに驚いた顔です。

そんなに意外だったでしょうか。

私は食物摂取の必要はなくても、食物摂取機能は存在すると、先程説明したはずですが。

もう忘れてしまったのでしょうか。

仕方ありません。人間は、自分に関係のないことや、興味関心のないことは、何でも簡単に忘れる生き物です。

久露花局長も、よく忘れ物をします。

それでも、毎日おやつとして食べるチョコレートだけは、一度として忘れたことはありません。

「はい、必要ありません」

と、私は答えました。

「必要ないのに、何で食べてるの?」

と、湯野さんの悪癖お友達が聞きました。

「皆さんが昼食を摂っているので、皆さんに習って、私も同じことをしてみようかと」

「え?別にしなくて良いんだよ?アンドロイドなんでしょ?」

と、湯野さんの悪癖お友達が言いました。

なんということでしょう。

私は今、彼女に気遣われています。

無理して人間のように振る舞わなくて良いんだよ、と言ってくれているのです。

悪癖持ちではありますが、心の優しい方です。

「ありがとうございます」

と、私は言いました。

感謝したときは、この言葉を伝えるべきだと、局長に習いました。

「え…は?」

湯野さんの悪癖お友達は、戸惑ったように狼狽えていました。

「気遣って頂いてとても恐縮ですが、特に苦痛ではありませんので、気にしなくて結構です」

「…え、何よ、あんた…」

「気持ち悪…」

と、湯野さんの悪癖お友達と、湯野さんが言いました。

が、私は彼女達との友好関係が、良好に保てていることに安堵していました。

彼女達が戸惑っている理由は、きっと彼女達が謙虚な心を持っているからでしょう。

自分達が気遣ったのに、気遣わなくて結構だと言われて、戸惑っているのに違いありません。

先程、購買部の所在地を教えてもらえなくて、これは意地悪なのではないか、と一瞬危惧しましたが。

その心配はなかったようです。

やはり、彼女達なりの、愛の鞭だったのですね。

人を小馬鹿にしたような笑顔で喋るという、残念な悪癖を持つ彼女達ではありますが。

お互いをよく知り合えば、心を(私は持っていませんが)通わせることも出来るのだと分かりました。