アンドロイド・ニューワールド

奏さんの挙動が不審なのが、気になりますが。

私と奏さんは、順路を進んでいきました。

「あ、奏さん。ヨロイザメがいますよ」

「よ、ヨロイ…?うっ…」

と、奏さんは水槽をちらりと見るなり、そっぽを向いてしまいました。

「名前からして、とても強そうですね。きっと、鎧のような鋼鉄な鮫肌を持っているのでしょう。私のサバイバルナイフで、歯が立つかどうか…」

「…目…目が気持ち悪い…。ギョロギョロした目で…」

と、私が話しているのに、奏さんは相変わらず、何故か一人でブツブツ呟いていました。

目?

しっかり開いた、良い目をしていると思いますが。

更に。

「あ、奏さん。ラブカがいますよ。話に聞いたことはありましたが、実物は初めて見ました」

と、私は水槽を指差して言いました。

すると。

「うぐっ…。何…そのエラ…」

と、奏さんは一目見るなり、やはり目を逸らしました。

エラ?

真っ赤で、なかなか印象的で良いエラだと思いますが。

しかも強そうです。是非戦ってみたいですね。

「奏さん、そこにクラゲがいますよ」

「く、クラゲ?」

「はい。アトラクラゲという名前だそうです」

「そ、そっか。クラゲならまだ何とか…」

と、奏さんは不思議なことを言いました。

同時に、ようやくまともに水槽の方を見たのですが。

「…思ってたのとだいぶ違う…」

と、奏さんは呟いて。

またしても、くるりと背中を向けました。

何を想像していたのでしょう。

カラフルで綺麗な色をした、良いクラゲだと思ったのですが。

では、次。

「あ、グソクムシがいますよ、奏さん」

「ぐ、グソクムシか…。うぅ…。分かってはいたけど、実物はやっぱりキツい…」

と、奏さんは呟いていました。

が、ちゃんと水槽の方を見ていました。

顔が、何だか物凄く、不味いものを食べさせられたときのような顔になっていますが。

「何故だか、グソクムシには親しみを覚えますね」

「…俺は…覚えないけどな…」

と、奏さんはポツリと呟きました。

見解の相違があるようで、残念です。

「では次…。…クリオネですか」

と、私は水槽の中を見て言いました。

有名な奴ですよね。

すると。

「クリオネ…!来た…!俺の癒やし!クリオネならだいじょう、」

と、奏さんは何故か食い気味に、勢いよくこちらを振り向きましたが。

「…何だか興味をそそらないので、次に行きましょうか」

「えぇぇぇ!ちょ、俺の唯一の癒やしがぁぁぁ」

「お次はスケールワームだそうです。目玉が飛び出てるみたいで、印象的ですね」

「うぎゃぁぁぁ気持ち悪い!」

と、何故か奏さんは騒いでいました。