アンドロイド・ニューワールド

彼女達のお弁当を、しばし観察した後。

白と赤以外の色は見られないと思っていたお弁当は、意外と茶色が多いという結論が出ました。

そういえば久露花局長も、よくチョコレートという、茶色っぽい食べ物を好んで食べているので。

現代人は、茶色の食べ物が好きなのかもしれません。

「観察は終了しました。ご協力感謝します」

と、私は言いました。

しかしまだ、私の中には疑問が一つあります。

「それからもう一つ、ご教授頂きたいのですが」

「何なの?」

「先程湯野さんが言っていた、購買とは何でしょうか」

と、私は聞きました。

購買という、言葉の意味は知っていますが。

「購買に行く」という文章の意味が分かりません。

「え?購買部行きたいの?」

「電波ちゃんはアンドロイドなんだから、食べる必要ないんじゃなかったの〜?」

と、湯野さんと、そのお友達が聞きました。

相変わらずの悪癖笑顔です。

購買とは、購買部のことだったんですね。

本で読んだ知識ですが、恐らくは学校の中のコンビニエンスストアのようなものです。

「はい。食べる必要はありませんが、食物摂取機能は備わっているので。円滑に学生生活に溶け込む為に、皆さんと同じように、食事をしてみようと思いまして」

「へぇ〜。やっぱり食べる必要あるんじゃん」

「…?食物摂取の必要はないと、先程言いましたが」

理解不能です。

「購買部の場所は何処なのか、教えてもらっても良いでしょうか」

と、私は言いました。

しかし、またしても悪癖笑顔で、

「食べなくて良いんじゃなかったの?じゃあ教えなくても良いよね〜」

「そうそう、アンドロイドは食べる必要ないもんね〜」

と、湯野さん達は言いました。

つまり、彼女達は教えてくれないという訳ですね。

「教えてはもらえないのですか?」

「し〜らない」

と、湯野さん達は笑いながら言いました。

そして、それから私には見向きもせず、茶色いお弁当を食べ始めてしまいました。

もう、私には興味なしといったところでしょうか。

一瞬、意地悪ではないかと思いましたが。

しかし、何事も悪く捉えるのは良くありません。

きっとこれは、彼女達から私への、愛の鞭という奴でしょう。

自分の欲するものは、自分の力で探せという、彼女達からの試練です。

神様は越えられない壁を人に与えない、という格言もあります。

私は神の存在を知りませんし、人ではなくアンドロイドなので、この格言が当て嵌まるかは甚だ疑問ですが。

とにかく彼女達が、自分で探せと言うならば。

では、自分で探すことにしましょう。

「分かりました。探索を開始します」

幸い、捜索範囲は校舎内に限られています。

砂漠に落ちたガラス玉を探すよりは、余程簡単な任務でしょう。