アンドロイド・ニューワールド

さて、いざ丸腰で挑む、深海魚水族館。

私達は、その未知の領域へと、足を踏み入れました。

一体、どんな魑魅魍魎が待ち構えているのでしょう。

何だか胸が高鳴りますね。

しかし、『新世界アンドロイド』に高鳴るような臓器はないので、あくまで比喩ですが。

「まずは…見てください。此奴の名前は、ミズウオだそうですよ、奏さん」

と、私は水槽を指差して言いました。

「う、うん…」

と、奏さんは、視線をチラチラあちこちに逸らしながら言いました。

大丈夫でしょうか。

「タチウオに似た魚ですね。その割には、顎が発達していますが…。その点は、深海魚の共通点ですかね」

と、私は言いました。

何となくですが、此奴には勝てそうな気がします。

タチウオに似ているからでしょうか。

さて、次です。

「次は…ノコギリエイですか。大きいですね。良い面構えです」

と、私は言いました。

一見、まるでサメのような印象を受けますが。

名前の通り、エイの仲間なんですよね。

ノコギリと言うだけあって、鼻の部分に長いノコギリのような突起物があります。

これが、此奴の武器なのですね。

なかなか強そうです。丸腰で戦うには、少々不安ですね。

「う、うん…そうだね」

と、奏さんは困惑したような声で言いました。

やはり、このノコギリに脅威を感じているのでしょう。

気持ちは分かります。

さっきまであった武器があれば、こちらの勝機も上がったのですが。

しかし。

「大丈夫です奏さん。逆に言えば此奴の武器は、このノコギリだけ。手始めにノコギリを白刃取りし、へし折ってしまえば、こちらのものです」

「う、うん…。多分、それが出来たら苦労しないだろうけどね…」

と、奏さんは言いました。

心配しているのですね。しかし、大丈夫です。

私なら、持ち前の機動力で、例え通常モードでも、ノコギリを白刃取りしてみせましょう。

『新世界アンドロイド』として。