アンドロイド・ニューワールド

しかし。

現実はとても非情です。

「えーと…。あぁ、良かった。水族館にも、ロッカーあるんだ」

と、奏さんは言いました。

彼の視線の先には、観光客が荷物を預けておく為の、貸出ロッカーがあります。

「じゃあ、それら全部、ロッカーに預けてから行こうか」

と、奏さんは言いました。

奏さん、今あなた、何と仰いましたか?

私から、武器を没収しようと?そういう腹積もりなのですか?

それは、とても危険な考えです。

「奏さん。我々は陸上に住まう生き物です。しかし奴らは、水中から出てくることはないでしょう」

「だろうね」

「つまり戦うとなれば、必然的に私達が水の中に入らなければいけません。故に、地の利は向こうにあるのです。地ではなく水ですが」

「そうだね」

「水中戦闘ではどうしても、それ相応の準備が必要となります。今回私が持ってきたのは、その水中戦闘に適した…」

「うん分かった。じゃあ俺が預けてくるから、瑠璃華さんちょっと待ってて」
 
「!」

と、私は驚いて固まってしまいました。

その間に、奏さんはさっさと、私のボストンバッグを拾い上げ。

それを膝の上に乗せて、車椅子を片手で動かし。

ロッカールームへと、消えていきました。

…なんということでしょう。

武器防具を取り上げられてしまいました。

これで私は、危険な深海魚達と、素手で戦わなければなりません。

非常に危険、かつ不利な戦いになることは明白でしょう。

それでも、ここまで来たからには。

私は、私達は、進まなければなりません。

いざ、海底に住まう者達のもとへ。