アンドロイド・ニューワールド

「奏さんは、どうして先程から、ヘビを見ないのですか?」

「…それは…」

「やっぱり、前世でヘビに…」

「いや、そういう訳じゃなくて…。それは多分ないと思うけど…。その、俺、恥を承知で言うと…ヘビ見てると、生理的嫌悪感を感じる」

「…」

と、私は思わず無言になりました。

「もっと分かりやすく言うと…すっごい気持ち悪い…」

と、奏さんは追撃とばかりに言いました。

申し訳無さそうな顔で。

誰しも生理的嫌悪感というものは、持っている生き物ですから。

奏さんが謝る必要はないのですが。

成程、奏さんはヘビが苦手だったんですね。

「分かりました。では、このエリアは早めに抜けましょうか」

「…ごめん…。本当、情けなくてごめん」

「いえ、気にすることはありません。誰しも、苦手なものはあります」

と、私は言いました。

久露花局長も、甘いものは大好きですが、抹茶味のお菓子は絶対食べませんからね。

「抹茶味は甘くない!甘くないお菓子なんて、お菓子じゃない!」などという、全国の抹茶好きを敵に回すという、危険な発言をしていますし。

それに比べれば、奏さんのヘビ嫌いなんて、可愛いものです。

私も、特にヘビに固執している訳ではありませんしね。

…とはいえ。

「…あのニシキヘビとは、やはり戦ってみたかったですね」

「…やっぱり好きなんだ、瑠璃華さん…」

と、奏さんは言いました。

いえ、そんなつもりは。

ともかく、このエリアは早めに抜けてしまいましょう。

…何だか、ちょっと名残惜しい気もしますが。

私に心はないので、名残惜しいなんて気持ちがあるはずがありません。

だからこれは、きっと気のせいでしょう。