アンドロイド・ニューワールド

あ、そうか。分かりました。

「大丈夫です奏さん。血清なら持ってきてますから。もし噛まれたとしても、すぐ応急処置します」

と、私は奏さんに言いました。

奏さんが、万が一毒ヘビに噛まれたときの心配をしていると思ったのです。

しかし。

「う、うん…」

と、奏さんは目を逸らしたまま言いました。

何だか表情が暗いですね。大丈夫でしょうか。

血清が信用ならないのでしょうか。

「どうかしましたか?」

「い、いや…。その…」

「見てください、このアミメニシキヘビ。私の太ももくらいありますよ。実に立派な体格です。ぶつ切りにしたら良い肉になりそうですね」
 
と、私はケージの中を指差したのですが。

「…」

と、奏さんは無言で、首を横に曲げて目を逸らしていました。

…。

「…奏さんは、前世はニシキヘビに噛まれて亡くなったんですか?」

と、私は聞きました。

ニシキヘビから目を逸らすなんて、それくらいしか理由が思いつきません。

すると。

「…多分そんなことはないと思うけど…。その…あんまりこう…ヘビがね、ヘビの…模様とか顔が…」

と、奏さんはもごもごと言いました。

「模様?良い模様してますよね。此奴らの皮膚と、人間の皮膚の単調な色を比べたら、あまりの落差に絶望してしまいそうです」

と、私は言いました。

さすが、鱗に覆われているだけのことはありますね。

私も今度局長に頼んで、ヘビ柄の皮膚に染めてもらいましょうか。

それに。

「あの顔。実に良い面構えです。今にも襲いかかってきそうなのが、大変ポイントが高いですね」

「…うん…。瑠璃華さんが、物凄くヘビが好きなのはよく分かった…」

と、奏さんは相変わらず壁を見ながら言いました。

私は別に、それほどヘビが好きなつもりはないのですが。

好きなように見えますか?