アンドロイド・ニューワールド

「?どうかしましたか?」

「え、いや…今何て言った?昨日から待ってたって?」

と、奏さんは目をぱちくりとさせて聞きました。

あぁ、昨晩のことですか。

「私は昨晩、局長との通信を終えて、荷造りを済ませた後、午後9時頃には、駅で待ってたんです」

「は!?何で!?」

と、奏さんは珍しく、声を荒らげて聞きました。

何でと言われましても…。

「奏さんがいつ来ても良いように。もしかしたら、奏さんが午前と午後を間違えてしまうかもしれないでしょう?」

「…例え俺が、時間を12時間間違えたとしても、空が暗かったら気づくよ。その時点で。そこまで馬鹿じゃないんだからさ」

「そうですか。それなら良かったです」

「何が良いの?何も良くないでしょ!」

と、奏さんは怒ったように言いました。

どうしましょう。彼の怒りの理由が、理解不能です。

「ってことは、昨日の夜から今まで、ずっとここで待ってたってこと!?外で一夜を明かしたってこと!?」

「そうなりますね」

「…馬鹿の発想だ…」

と、奏さんは呆然と呟きました。

え?私が馬鹿?

どの辺りが?

「遅刻するよりは、早く来る方が良いでしょう?」

「それはそうだけど、でも限度ってものがあるでしょ!瑠璃華さん、君は限度を分かってない!」

と、奏さんは言いました。

限度ですか。人間の匙加減は難しいですね。

私だったら、一週間前に待っていても、別に構いませんが。

「って言うか、夜中大丈夫だったの?誰かに声かけられたりしなかった?」

「え?そういえば…はい。警察を名乗る方二人に、声をかけられましたね」

と、私は答えました。

あれは、午後11時頃のことでした。

「お嬢ちゃんどうしたの?家に帰らないの?」とか何とか聞かれ。

「こんな時間に外にいたら危ないよ。家まで付き添うから、住所教えて」とも言われたので。

これは噂の、「警官を装った強盗犯の手口だ」と判断しました。

住所を聞いてくるんですから、それ以外の理由はありませんよね。

アパートには、ノートパソコン以外の貴重品は特にありませんか。

それでも私は、みすみす強盗犯に、自分の部屋を好きにさせるつもりはなかったので。

私はそこで、策を講じることにしました。

以前、『Neo Sanctus Floralia』にいたときに観た、ホラー映画を参考に。

私は可能な限り低い声で、強盗犯の手を掴み。

上目遣いで、血走った目を強盗犯に向け。

「返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ」と連呼してみました。

声量も、最初はメゾピアノくらいで、段々クレッシェンドをかけていき、最終的にはフォルテくらいの大きさになり。

その時点で、顔面蒼白になっていた強盗犯達に、とどめの一言。

「返せぇぇぇぇ!!」と叫んでみたら。

二人共、「うわぁぁぁ!出たぁぁぁぁ!」とか叫び声をあげて、逃げていきました。

腰抜けな強盗犯達です。

こうして私は、非常に平和的に、強盗犯の襲撃から逃れることが出来たのです。

それ以降は、朝まで平穏でした。

やはり、ホラー映画は真面目に見ておくものですね。

と、いう説明を奏さんにしたところ。

「何をやってるの瑠璃華さんは…。怖っ…」

と、奏さんは、呆れたような、怯えているような、複雑な顔で言いました。

「あとそれ、多分強盗犯じゃなくて、本物の警察の人…」

と、奏さんは呟いていましたが。

もう撃退してしまった後なので、どうすることも出来ません。

まぁ、平和的に解決したのだから、それで良しとしましょう。