アンドロイド・ニューワールド

私が今日、リュックサックに入れて持ってきたのは。

「まずは基本のサバイバルナイフ、大きなナタとノコギリ。金属製のハンマー、トンファー、閃光弾。これで、攻撃面は大丈夫でしょう」

と、私は言いました。

武器は、充分揃えました。

なら次は、守備面です。

「大型の猛獣でも通用する、殺虫スプレー。これは国内に売ってなかったので、自前のものを用意しました」

「…」

「あとは、万一襲われたときの為に、医療用キットも用意しました。勿論、血清も入っているので、その場で治療可能です。あとは、捕獲用のロープ、エサ、それから折りたたみ式の檻を用意してあります。これで、どんな爬虫類が現れても対処出来ますね」

「…ねぇ、瑠璃華さん」

と、奏さんは言いました。

「はい、何でしょうか?」

「俺、その施設には行ったことがないけど、これだけは確信を持って言える。瑠璃華さんは、物凄く大きな勘違いをしてる」

「はい?」

と、私は聞きました。

勘違い?私が?

何の勘違いをしているのでしょう。

「あのね、爬虫類の館って、別に爬虫類と戦いに行くところじゃないから」

「…!」

「…何で衝撃受けてるの…?」

と、奏さんは聞きました。

が、私はそれどころではありませんでした。

これは大きな衝撃です。

「爬虫類の館ですよ?古今東西、様々な種類の爬虫類を集めて、いざ尋常に勝負する施設ではないのですか?」

「…何?その漫画の闘技場みたいな設定…」

と、奏さんは聞きました。

「この国には、そんな危険な施設は存在しないよ。万が一あったとしても、一般人は立ち入り禁止だよ」

と、奏さんはきっぱり言いました。

なんということでしょう。

「では、爬虫類の館とは、何をしに行くところなのですか?」

「それは…。俺も行ったことないから、確かなことは言えないけど…。動物園と同じなんじゃない?色んな爬虫類を集めて、檻の中で飼ってるのを、ガラス越しに見るだけだよ」

「…!」

と、私は無言で衝撃を受けました。

そんな施設だったのですか。

それでは爬虫類の館というのは、単なる見世物小屋じゃないですか。

「なんてことを…。私はてっきり、爬虫類を自分で倒し、捕獲することで、検分を広げる為のアミューズメント施設だとばかり…」

「…生き死に懸かってる時点で、全然アミューズメントではないでしょ…」

と、奏さんは言いました。

「では、私が今日持ってきた荷物は?服の下に着込んできた防刃ベストは?」

「そんなのまで着てたの?全部要らないよ」

「しかし、万が一ということも有り得るのでは?」

「ガラスは分厚いし頑丈だから、襲われることはないはずだよ。大体そんな事件が起こるなら、とっくにニュースになってるよ」

と、奏さんは言いました。

…そうだったのですか。

「それと、そんなの持ち歩いてると危ないし、電車にも乗れないから…。駅のロッカーにでも預けておこう?」

と、奏さんは言いました。

「折角準備したのに…全部無駄だったのですね」

「しょ、しょうがないよ…。どうする?行くのやめる?」

「いえ、構いません。例え単なる見世物小屋観察だとしても、ここまでご足労頂いた奏さんを、無下に追い返す訳にはいきません。行きましょう」

「…行く場所を変える、っていう選択肢はないんだね、瑠璃華さんには…」

と、奏さんはポツリと呟きましたが。

爬虫類の館の真実を知って、かなり衝撃を受けていた私には、些末なことでした。