アンドロイド・ニューワールド

「…何か問題が?」

と、私は聞きました。

さっきまで、乗り気だったじゃないですか。

それがどうして、いきなりタイムなのでしょうか?

「ちょっと待って。もう一回。もう一回、施設の名前言ってもらって良い?」

と、奏さんは言いました。

成程、よく聞こえなかったのですね。

仕方ありません。人間の耳は、私達『新世界アンドロイド』と違って、それほど集音性能か高くありませんから。

聞き逃すこともあるでしょう。

なら、もう一度言えば良いだけです。

「『見聞広がるワールド 爬虫類の館』です」

「…」

と、何故か奏さんは無言です。

「…ごめん。やっぱりもう一回言ってもらって良い?」

と、奏さんは言いました。

どうやら奏さんの耳は、かなり集音性能が低いようです。

そんなときもあります。

「『見聞広がるワールド 爬虫類の館』に行きましょう」

「…」

「…また聞き取れませんでしたか?」

「…むしろ聞き取れたからこそ、反応に困ってる」

と、奏さんは言いました。

どうやらようやく聞き取れたようで、良かったです。

「え、は、爬虫類…の、舘…?」

と、奏さんは聞きました。

「はい。ご存知ですか?爬虫類」

「いや、は、爬虫類は知ってるけど…」

と、奏さんは言いました。

奏さんも、爬虫類を知ってるんですね。

「それなら良かったです。決まりですね」

「いやいやいや、ちょっと待ってそうじゃなくて」

「…?爬虫類を知っているということは、興味関心があるということでは?」

「…瑠璃華さんの思考回路って、本当どうなってるのか、切実に知りたいよ…」

と、奏さんは言いました。

ご要望とあらば、私の頭蓋を切開してご覧に入れても良いのですが。

一度切開したら、元に戻すのが面倒なので、やめておきましょう。

「そ、そんな施設があったの?」

「はい。ホームページによると、開館してからまだ3年ほどだと」

「あ…結構最近なんだ…」

と、奏さんは言いました。

「行ったことありますか?」

「ないよ」

と、奏さんは答えました。

物凄く回答が早かったですね。即答という奴です。

「では丁度良いですね。行きましょう。見聞を広め、更に友情も深まる。一石二鳥とはこのことです」

と、私は言いました。

「奏さんも、それで良いですよね?」

「…瑠璃華さんが行きたいなら、俺は何処でも良いけど…。瑠璃華さんって…爬虫類好きなの?」

「?別に、爬虫類に対して特別な興味関心は持っていませんが…」

「じゃあ、何で爬虫類…?」

と、奏さんは聞きました。

…何で…と言われましても。

「…何となくですかね」

「…やっぱり好きなんだ…」

と、奏さんは呟きました。