「では早速、今週の土曜日に出かけませんか?」

「それは構わないけど…」

「けど?」

「何処に行くの?」

「…」

と、私は無言で答えました。

奏さんは、なかなか意表を突く質問をしてきますね。

「何処に行くの?瑠璃華さん。もう決めてる?」

「…」

「瑠璃華さん、何処に行きたいの?」

「…」

「…もしかして、全然決めてなかった…?」

と、奏さんは聞きました。

…。

私は、その場で膝を付きました。

「誠に申し訳ありません。私としたことが、行き先を全く決めておらず…」

「い、いや立って?大丈夫だから。そんなことで土下座しようとしなくて良いから。今から決めれば良いだけのことだから」

と、奏さんは言いました。

優しいですね。

「瑠璃華さん、何処か行きたいところはないの?」

と、奏さんは聞きました。

行きたいところ?

「そうですね…。お友達と出かけるに相応しいところ…」

と、私は言いました。

同時に、頭の中で考えを巡らせました。

お友達と一緒に…出かけてみたいところ…。

あ、そうです。

「海王星とかどうですか?綺麗ですよ」

「ぶはっ」

と、奏さんは噴き出しました。

何か面白いものでも見たのでしょうか。

「どうかしましたか?」

「い、いや…。その…地球圏で…地球圏でお願いします…」

と、奏さんは言いました。

奏さんは、地球圏をご所望のようです。

海王星、良いかと思ったんですけどね。

でもよく考えたら、奏さんが宇宙空間に行くには、色々と装備品が必要になるので。

やはり、近場の地球圏の方が良さそうですね。

「では人類未踏のサバンナに行って、自然を満喫するのはどうですか?」

「ぶはっ」

と、奏さんはまたしても噴き出しました。

何か面白いものでも見えたのでしょうか。

「どうかしましたか?」

「あのね…国内…国内にしようよ。パスポート持ってないから、俺」

「そうでしたか」

と、私は答えました。

そういえば、一般人は国境を越えるとき、パスポートが必要なんでしたね。

奏さんは、パスポートを持っていないそうです。

「なら国内にしましょう」

「うん。そして県内。県内だと嬉しいな」

と、奏さんは言いました。