アンドロイド・ニューワールド

「…1110番。良いか、局内ではもう諦めたから別に良いが、外界に出たからには、一定の距離を、」

「それにしても、運動場狭くないですか?僕が通ってる学校は、もっと運動場広いんですけど」

「…そうか」

通行人の視線に耐えられなくなったのか、ちょっと注意を促してみた紺奈局長だったが。

普通にスルーされてた。

可哀想。

「それはそれとして、人目を引くから、この手をはな、」

「それに、僕の学校の体育祭は、二学期だそうですよ。学校によって違うんですね〜」

「…そうだな」

注意しようにも、ことごとく朗らかな笑顔でスルーされる紺奈局長。

『新世界アンドロイド』が、あんなに簡単に笑顔を作れることは、凄いと思うけど。

それにしても、紺奈局長が可哀想。

もう諦めたのか、紺奈局長は何も言わなかった。

ので、ちゃっかりくっついたままの碧衣君。

…。

…うちのところの瑠璃華ちゃんも、もうちょっと愛想良くなってくれたら、と思ってたけど。

行き過ぎると大変だから、やっぱり限度ってものがあるよね。

「それで…二人はどうする?ここで、一緒に見る?」

と、私は誘ってみた。

幸い、大きめのビニールシートを持ってきたから、二人増えても大丈夫だ。

しかし。

「いや…やめておく」

紺奈局長は辞退。

あれ。

「遠慮しなくて良いのに」

「1027番には、我々が来ることは伝えていないのだろう?遠目から観察出来れば、それで良い」

律儀だなぁ。

「でも、どうせ瑠璃華ちゃんは二人を見つけちゃうと思うけど」

瑠璃華ちゃんの…いや。

『新世界アンドロイド』の目なら、このグラウンドに集まる全ての人間の顔を、見分けることが出来る。

当然、観客の中に紺奈局長と碧衣君がいることにも、気づくだろう。

「それでもだ。他局の人間に露骨に監視されていては、1027番もやりにくいだろう」

「…そうかなぁ…」

瑠璃華ちゃんは、そういうことは気にしないと思うけど。

二人が来てるのを見ても、「あぁ。あの方達も来てたんですね」くらいで済ませそう。

しかし。

「それに…」

「…それに?」

「…この状態を、あまり人に見せびらかしたくはない」

と、若干戸惑ったような目で。

紺奈局長は、隣でくっついて、何なら犬みたいにすりすりしている、碧衣君を見つめていた。

…あー…うん。

これは…目立つね。どうしても。

「だから、少し人気の少ないところで、遠くから見ていようと思う」

「そっか…」

「え、人気のないところで?良いですね、秘密のデートって感じで!何します?」

碧衣君…。

「何もしない。1027番の観察をするだけだ」

「分かりました!じゃあ僕は、局長を観察しますね」

「それはしなくて良い」

「うんうん、相変わらず恥ずかしがり屋ですね〜。そんなところも好きですよ」

「…」

鮮やかに会話が噛み合っていなくて、むしろあっぱれ。

第2局では、もう恒例みたいなやり取りなんだろうけど。

第4局では有り得ないことなので、隣にいる翠ちゃんが、唖然としてあわあわしている。