…あら?

私達、何だかスターみたいですね。こんなに一気にたくさんの視線を浴びるとは。

「まるでアイドルのような、熱い視線を送られていますね」

と、私は言いました。

教会に飾られているイエス・キリスト像も、こんな気分なのでしょうか。

悪い気はしませんね。

しかし。

「…俺が運動会の日に来たからね。面倒な奴が来た、って思ってるんだよ」

と、奏さんは言いました。

皆から受ける熱い視線に、必死に目を逸らしながら。

…成程。

そういえばクラスメイトの皆さんは、奏さんに来て欲しくないんでしたっけ。

その証拠に。

「何で来てんの?あいつ…」

「嘘。また足引っ張る気?」

「マジかよ。俺、中学のときもあいつと同じクラスで、ビリだったんだけど」

「私もよ。本当萎えるよね。空気読めっての」

と、クラスメイト達は、ひそひそ話していました。

幸い、奏さんに聞こえる声量ではないのが、唯一の救いでしょうか。

私は周囲の集音性能が高いので、いくらひそひそ話していても聞こえてしまいますが。

どうやら皆さん、やはり奏さんが運動会に参加することに、反対しているようですね。

奏さん自身も、何だかいたたまれなさそうですし。

しかし、今日は何の心配も要りません。

「大丈夫です、奏さん。私の立てた作戦で、見事チームを優勝に導こうではありませんか」

「う、うん…。正直俺としては…その作戦が一番しんぱ…いや、恥ずかしいよ…」

「?ご安心ください。何か困ったことがあったら、何でも私に相談してください。私と奏さんはお友達ですからね。必ず力になります」

「あ、ありがとう…」

と、奏さんは言いました。

そう、何も心配は要りません。

奏さんなんて欠席してしまえば良い、と言っていたクラスメイトの、鼻を明かしてあげるとしましょう。