アンドロイド・ニューワールド

すると。

「そ、それより瑠璃華さん!」

「…借金競争…」

「ま、まだ引き摺ってるの?」

と、奏さんは聞きました。
 
それで我に返りました。

私としたことが。今何を考えていたんでしたっけ。

「はい。何でしょう奏さん」

「ど…どうするの?あんな…湯野さんに、あんなこと言って…」

「あんなこと?」

「俺が、リレーに出るって言ったことだよ!」

と、奏さんは言いました。

あぁ、その件ですか。

「大丈夫ですよ。奏さんだけ、除け者にするようなことはさせませんから」

「それは…その気持ちは嬉しいけど…。俺だって、クラスメイトに迷惑をかけないなら…リレーにも参加したいけど…」

と、奏さんは口ごもりながら言いました。

なんだ。やっぱり出たかったんですね。

体育の授業のときもそうです。

一度拒まれて、そこで諦めてしまうのは、奏さんの悪い癖なのかもしれません。

それだけ、奏さんが謙虚だということなのでしょう。

しかし、この場合は謙虚である必要はありません。

堂々と、「自分も出たい」と言えば良いのです。

ようは、創意工夫の問題です。

「だけど、俺はどうやったって走れないし…。車椅子も…競技用の車椅子じゃないから、そんなに小回りも効かないし…レーンから出ないように進むだけで、精一杯で…」

と、奏さんは言いました。

それは苦労されたことでしょう。

しかし。

それは、奏さんが一人で走ったときの話です。

今は違います。

何故なら今は、私がいるのですから。

「全く問題ありません」

「も、問題ないって、何が…」

「それはですね…」

と、私は奏さんが「走る」為の方法を教えました。

完璧な方法です。

しかし奏さんは、それを聞くなり顔を真っ赤にさせて。

「え、いや、ちょ、瑠璃華さん?う、運動会っていうのは、観客が大勢見てる中で行われるものであって、俺も皆に見られ、」

「そうと決まれば、予行練習をしましょう」

「え、予行練習って?ちょ、瑠璃華さんんんん!?」

と、奏さんは何やら言っていました。

が。

きっと気のせいですね。

それでは、運動会に向けて、練習を始めるとしましょう。