アンドロイド・ニューワールド

では、改めて。

「湯野さん。あなたはクラス委員なのでしょう?だったら、最初から奏さんを除け者にするのではなく、どうしたら奏さんが参加出来るか、少しは考えたみたらどうです?」

「そんな…考えたって仕方ないでしょ?リレーは全員参加ってことになってるんだし。緋村だって、自分のせいでクラスが負けるのを見るのは、嫌なんじゃないの?」

と、湯野さんは言いました。

確かに、そうかもしれませんね。

広い運動場を、例え50メートルでも、車椅子で移動するのは苦労するでしょう。

自分一人が壊滅的に遅いせいで、クラス全員に迷惑がかかるのは、奏さんとしてもいたたまれないのでしょう。

だからこそ、運動会への参加を辞退しようとしているのでしょうから。

しかし。

「良いでしょう。なら、私に考えがあります」

と、私は言いました。

誰もが考えることを放棄するなら、私が代わりに考えましょう。

どうしたら、奏さんが運動会に出られるか。

どうしたら、奏さんが誰にも迷惑をかけずに、リレーに参加出来るか。

そんなもの、考えるまでもなく、簡単に分かることです。

「え?」

「リレーの走順は?決まっているのですか」

「い、いや…。それはまだ…。一応、男女が交互に走ることになってるけど…」

と、湯野さんは答えました。

成程。それは都合が良いです。

「走行距離は何キロメートルですか?」

「き、キロって…。一人100メートルよ」

と、湯野さんは答えました。

たった100メートルですか。

そのたった100メートルの為に、これまで奏さんは、後ろめたい思いや、悲しい思いをさせられてきたのですね。

実に不快です。

「分かりました。では、奏さんの後に私が走る、という走順にしてください。決してクラスメイトに迷惑はかけないと、ここであなたに宣言します」

「えっ…」

「それなら文句はないでしょう?」

「ちょ、ちょっと待って瑠璃華さ、」

「奏さんは黙っててください」

「…ごめんなさい…」

と、奏さんは切なそうに引き下がりました。

申し訳ありませんが、やはりこの話は、私と湯野さんのやり取りなので。

「…わ、分かったわよ…。緋村の後にあなたね」

「えぇ。宜しくお願いします」

「…じゃあ、その件と、あと借り物競争…頼んだから」

「はい。分かりました」

と、私は言いました。

すると、話が終わるなり。

湯野さんは、逃げるようにそそくさと去っていきました。