アンドロイド・ニューワールド

そういえば私は、このクラスに来たとき。

電波ちゃん、というあだ名をつけてもらったんでしたね。

つまり、呼び止められたのは私です。

そしてこの声は、聞き覚えがあります。

振り向いてみると、やはり私の予測通り。

クラス委員の湯野さんが、そこに立っていました。

こうして言葉を交わすのは、久し振りですね。

先程は、勝手にあなたの中間試験の点数を見てしまい、申し訳ありませんでした。

「私に、何か用でしょうか?」

「運動会の種目。電波ちゃんは借り物競争になったから」

「…?」

と、私は首を傾げました。

いきなり、唐突に、何の話でしょう。

何のことか分からないことを、一方的に断定されてしまったのですが。

更に。

「幽霊君は、いつも通り補欠ね。棒奪いの」

と、湯野さんは、奏さんにも言いました。

奏さんは、これが何の話か理解しているのでしょうか?

すると。

「…うん」

と、奏さんは静かに頷きました。

「あと、分かってると思うけど、当日は来ないでよ?」

「…うん。分かってる」

と、奏さんは頷きました。

どうやら奏さんには、これが何の話か分かるようです。

是非とも教えて頂きたいところですが。

まずは、話を持ちかけてきた湯野さんに、直接聞いてみることにしましょう。

「湯野さん。質問しても宜しいでしょうか?」

「何?」

「今の話は、一体何のことですか?私には理解不能です」

と、私は言いました。

「…」

と、湯野さんは無言で、私を睨みました。

そんな不満顔をされても、私は分からないことを分からないと聞いているだけなので。

どうしてあげたら良いのか分かりません。

すると。

「運動会。うちの学校では、来月の頭にあるの」

と、湯野さんは言いました。

良かった。ちゃんと説明してくれました。

何だかぞんざいな言い方ですが、説明してくれているのだから、言い方なんてどうでも良いですね。

「そうなんですね」

「で、その運動会に出場する種目決め。電波ちゃんは借り物競争に出て」

「分かりました」

と、私は答えました。

運動会なら、知ってますよ。

やったことはありませんが、知識として知っています。

生徒達がそれぞれチームに分けられ、走ったり飛んだり泳いだり踊ったり回ったり、様々な種目のスポーツを行って、優勝を競う。

そんな、学校ではお馴染みの、一大イベントですね。

多くの生徒は、そんな一大イベントを楽しみにしているそうですが。

一部の生徒からは、雨でも槍でも斧でも剣でも良いから降ってくれ、と祈られるイベントでもあります。

槍が降ってきたら、それはそれで困る気がしますが。