アンドロイド・ニューワールド

「私が遂行している『人間交流プログラム』は、人間の感情を理解することが目的であって、試験で良い成績を収める必要がないので」

と、私は説明しました。

私の今回の中間試験の目的は、あくまで奏さんとの勉強会を通じて、友人である奏さんとの交友を深めること。

この目的は、試験前日の時点で、既に完遂されていました。

更には試験直後、碧衣さんに遭遇したあの日。

喫茶店でフレンチトーストを食べながら、お互いに更に交友を深めたので。

これでもう御の字だと思っていました。

よって、私自身の試験には、全く手出しをしなかったのですが…。

しかし。

「あぁ、もう…。瑠璃華さん…。そうなんだろうけど、でも成績だけは…。一生に関わるものでもあるんだし…。いや、これは…余計なお世話かもしれないけど…。折角頭良いのに…」

と、奏さんはブツブツと、何かを呟いていました。

何が言いたいのでしょう。

この際ですから、はっきり言ってもらって結構なのですが。

「…俺はね、瑠璃華さん」

「はい」

「瑠璃華さんと一緒に、試験で良い点取って喜びを共有したかったよ」

と、奏さんは言いました。

はっきりと。

…そうだったんですか。

「それは申し訳ありません…。先にそれを知っていれば、そのように対応したのですが…」

と、私は言いました。

奏さんがそんな風に思っていたとは。知りませんでした。

事前に知っていれば良かったのですが。後の祭りという奴ですね。

成程。私達の友情構築は、試験後、今この瞬間まで続いていたのですか。

それは気づきませんでした。

「もう、過ぎたことだから仕方ないけど…。期末。じゃあ、期末試験には、ちゃんと真面目に試験に取り組んでよ?ちゃんとやらないと、補習になっちゃうよ」

「了解しました。期末試験ですね。お友達に頼まれたからには、私も今度は、真面目に試験を解くことをお約束します」

「はい。約束してください」

と、奏さんは言いました。

「では、脳内スケジュール管理システムに、期末試験の日程を刻み込んでおきます。一秒たりとも、一瞬たりとも、決して忘れることのないように…」

「い、いや…そこまで頑張らなくても良いから…」

「いえ。友人の頼みとあらば、私は脳内の全リソースを割いて…」

と、私は言いかけましたが。

そのとき、背後から声がしました。

「ねぇ、ちょっと電波ちゃん」

と、クラスメイトは言いました。