アンドロイド・ニューワールド

「それで、その…チョコレート好きな局長っていうのは、女性?」

「いえ、男性です」

「あ、そうなんだ…。そこまで甘党なら、女性なのかなと思ったけど…男性でも、そんな甘党がいるんだね」

「はい。女性の方が甘い物好きだと思っているなら、それは偏見ですね」

と、私は言いました。

男性だろうと女性だろうと、甘い物に対するこだわりは変わりません。

女性でも甘い物が嫌いな人はいますし、逆に男性でも、局長のように、甘い物がなければ、危うく自殺しかける人もいます。

「ごめん。そんなつもりはなかったんだけど…」

「いえ。理解して頂けたなら、それで結構です」

「うん…。えぇと…それじゃ、その局長さんが、瑠璃華さんにとってお父さんなんだね」

と、奏さんは意外なことを言いました。

…お父さん?

久露花局長が?

「…私は別に、久露花局長の精子をもらって生まれた訳ではありません。私は『新世界アンドロイド』であって…」

「うん。それでも…その局長が、何て言うか、瑠璃華さんを設計して、組み立てて、この世に生まれさせてくれたんでしょ?」

「…そうですね」

と、私は頷きました。

そして、その局長から、様々な装備品を与えられ。

最低限、人間世界で生活していくのに必要な知識を教えてくれました。

「なら、その人が瑠璃華さんのお父さんなんだよ」

「…そうですか…」

と、私は答えました。

しかしその解釈は、とても「人間的」な思考です。

『新世界アンドロイド』である私に、当て嵌めて良いものなのでしょうか?

「お母さんは?瑠璃華さんには、お母さんはいないの?」

と、奏さんは、今度は別の質問をしてきました。

お母さん?母親のことですか?

「前述の通り、私は卵子と精子から生まれた訳ではないので、母親は…」

「でも、さっきほら…。副局長?だっけ」

と、奏さんは言いました。

副局長。朝比奈副局長のことですね。

「その人も男性?」

「いえ、副局長は女性です」

「その人も、瑠璃華さんを製造するのを手伝ったりしたの?」  

「…そうですね。第4局は、久露花局長と、朝比奈副局長が担当しているので。第4局で製造された『新世界アンドロイド』は、全員あの二人の手によって、造り出されました」

「じゃあ、その副局長が、瑠璃華さんのお母さんだ」

と、奏さんは言いました。

朝比奈副局長が…私のお母さん?

そんな発想が飛んでくるとは。

考えてみたこともありませんでした。