アンドロイド・ニューワールド

怒り…。この不快感が、怒り…?

分かりません。

「ご、ごめんね。瑠璃華さん。なんか怒らせちゃって…」

と、奏さんは謝罪しました。

私が怒った(?)のは、自分のせいだと思っているようです。

が、別に私は、奏さんに対して何らかの不快感を抱いている訳ではありません。

「そ、それより、瑠璃華さんのご両親は?」

と、奏さんは強引に、自分の話を避け。

今度は、私のことについて、尋ねてきました。

「どんな人?やっぱり瑠璃華さんに似て、面白い人?」

と、奏さんは尋ねました。

何ですかその質問は?

まるで、私が面白い人みたいな言い方をしますね。

私は面白くもありませんし、そもそも人ではなく、『新世界アンドロイド』です。

「局長のことですか?」

「そう。どんな人?」

「どんな人、ですか…」

と、私は言いました。

そして、考えました。

私を製造した久露花局長が、どんな人か。

「まず、極度の甘党です」

「…最初に出てくる特徴、それなんだ…」

と、奏さんは言いました。

済みません、つい。 

「甘いものなら全般好きなようですが、抹茶味やビター風味など、少しでも苦い部分があると嫌がります」

「…本当に甘党なんだね…」

「はい。そして、甘い物の中でも、特にチョコレートが好みのようで。異常なまでのチョコレート好きです」

「あぁ、チョコレート美味しいもんね。俺もたまに、コンビニのチョコ菓子買ったりして…」

「毎週段ボール箱いっぱいのチョコ菓子を、ダース単位で注文しています」

「…」

と、奏さんは無言になりました。

何か気になることでもあったのでしょうか。

「毎時間チョコレートを摂取しないと、禁断症状が出ます」

「き、禁断症状って…?」

「まず手足の痙攣から始まり、次の段階になると『あばばばば』などの奇声を発します。この辺りになると、周囲の声は何も聞こえなくなるようで、話しかけても返事が帰ってこなくなります」

「…」

と、奏さんは無言ですが。

何か気になることでもあったのでしょうか。

「更に末期症状を迎えると、『チョコレートも食べられない人生なんて、生きてる意味もない!』と叫んで、窓から飛び降り自殺を図ろうとします。えぇ、あのときはさすがに、私も焦りました」

「…」

「慌てて私が羽交い締めにし、副局長が局長の口にチョコレートを詰め込むと、何事もなかったように正気に戻り、『あれ?君達どうしたの?そんな焦った顔して』と、普通に喋り始めます。自分が正気を失っていたときの記憶は、全くないようですね」

「…そ、そうなんだ…」

「はい。久露花局長は、そんな人です」

と、私は説明しました。

「そうか…。やっぱり、瑠璃華さんに似て、かわっ…いや、面白い人なんだね…」

と、奏さんは呟きました。

今、変わってる、と言いかけませんでしたか?

気のせいでしょうか。

それと、私が「面白い人」と判断される理由が分かりません。

私の何が面白いのでしょう。顔?