アンドロイド・ニューワールド

従って。

「お断りします。今謝ってくださらないなら、第三者に入ってもらいます」

と、私は言いました。

今、の部分を強調して。

「いや、久露花。あのな」

「うるさいです。謝るか、拒否するか、早く決めてください」

と、私は言いました。

奏さんが、唖然を通り越して、むしろ青ざめていますが。

見えなかった振りをしました。

「…」

と、化学教師は無言で、私を睨みつけました。

その目には、明らかに憎しみのような感情がこもっている、ように見えましたが。

どうぞ、憎みたいのなら勝手に憎んでください。

私の目的は、人間の感情を理解すること。

当たり前のことを当たり前のように指摘しただけなのに、何故あなたが私を憎まなければならないのか。

さっぱり理由は分かりませんが。

それでも、それはそれ。

けじめは、ちゃんとつけてもらわなければ。

すると。

「…申し訳ありませんでした」

と。

苦虫を噛み潰したような顔で、化学教師がポツリと、一言言いました。

全く反省の色が見えない謝罪ですが。

自分の何が悪かったのか、分からないならば、それは仕方のないことです。

重要なのは、例え形だけだとしても、ちゃんと謝罪したという事実です。

私は『新世界アンドロイド』ですが、一応今は人間として、義理人情の世界で生きています。

頭を下げられれば、まるっきり耳を貸さない訳にも行きません。

謝れと促したのは、私ですしね。

許す気がないのなら、そもそも謝罪など求めません。

ですから。

「そうですか」

と、私は答えました。

謝ったからといって、先程の奏さんへの暴言が消える訳ではありませんが。

一応は謝ったのだから、それで不問ということにしましょう。

そうして、納得した私は、奏さんと共に席につき。

そのまま、なんとも気まずい空気の流れる中、授業が再開されたのでした。