「…久露花さん…」

「駄目ですか?」

と、私は尋ねました。

「…ううん、駄目じゃない」

と、緋村さんは言いました。

「では、私達は今日から友達ですね」

「うん…。ありがとう、久露花さん」

「?感謝されるようなことはしていませんが…。どういたしまして」

「…ありがとう…本当に…」

…と。

緋村さんは、泣きそうになりながら言いました。

…人間の、涙腺が緩む、その基準が分かりません。

友達になって欲しいと、頼んだのは私なのですから。

感謝するのは、私の方では?

…あ、そうだ。

「良いことを思いつきました」

「…?良いこと?」

「今から私はあなたのことを、下の名前で呼びます。奏さん」

と、私は言いました。

「こちらの方が、より友達らしい気がします。奏さんも、私を下の名前で呼んでください。私の下の名前は瑠璃華です」

「え」

「ちなみに、最初は瑠璃という名前だったのですが、華をつけた方が今時の名前っぽいということで、私が提案して瑠璃華になりました。さぁ、呼んでみてください」

と、私は言いました。

しかし。

「え、いや…。それは…さすがにちょっと恥ずかし過ぎると…」

「友達とは、下の名前で気楽に呼び合うものでは?それとも、友達にはなったけども、そこまで親しくなるには一線を画すという、奏さんなりのスタイルですか?」

「そ、そういう訳じゃないけど」

「では、下の名前で呼んでください」

と、私は言いました。

すると。

「わ、分かった…。覚悟を決めるよ。その…瑠璃華、さん」

と、顔を赤くした緋村さん、改め。

奏さんは言いました。

「ありがとうございます」

と、私は言いました。

…こうして。