「君はとても優秀な子だよ、ヘレナちゃん」

と、局長は言いました。

局長が手にしている数枚の書類は、私に関するデータを記したものだと推測します。

「はい」

「身体機能、演算能力、どれを取ってもSクラスとして遜色ない。素晴らしい才能だ」

と、局長は言いました。

「はい」

「…おまけに、君はとても綺麗だ。世間では君のような子のことを、美人だと言うだろうね」

と、局長は言いました。

「はい」

「…ついでに、命令に忠実で素直。真面目。ちょっと…いや、かなり天然なところはあるけど、そこも愛嬌がある」

と、局長は言いました。

「はい」

「…」

局長は、何も言いませんでした。

言うべきことが尽きたのだと推測します。

局長に言うべきことが何もないなら、私も口を閉じているべきでしょう。

沈黙を守ります。

しかし、私が沈黙を守ろうと決めた、その10秒後。

「…そんな君には、致命的な欠点がある」

と、局長は言いました。

どうやら、言うべきことは尽きていなかったようです。

私の推測が外れました。

おまけに、先程局長は、私にとって大変気になることを言いました。

反芻してみましょう。

私には、致命的な欠点があると。