あの日に交わした約束は、思い出の場所で。

今と過去の記憶が重なり合って、あのとき遥に抱いていた思いがよみがえりそうになった。

でも、その思いを断ち切るように心にそっと蓋をした。


こんなことあっていいわけがない。私には結人くんがいるんだから。

「……ねぇ遥」

「ん?」

「私たち、幼なじみとしてならまた……」

保健室のドアが開く音がした。


「奈央」

聞き覚えのある声が聞こえたのと同時にカーテンがさっと開かれた。

「……結人くん」

「奈央、大丈夫か?」

遥を見て一瞬驚いていたけど、遥の目の前で私の両手をとりそう言った。

「大したことないよ。大丈夫」

「……じゃあ平田、俺行くわ」

結人くんを気遣って呼び方を「奈央」から「平田」に変えたのがすぐにわかった。

生まれて初めて、遥から苗字で呼ばれた。


「……うん、また」

結人くんがいるにもかかわらず、『まだ一緒にいたかった』と思ってしまった自分に罪悪感が募る。


遥が私に背を向けたとき、私は気付いてしまったんだ。

遥の紺のジャージのポケットから出ていたあの「ストラップ」に。

私と色違いのおそろいの「ストラップ」に……


自分がどんな顔をしているのか、なんとなく想像ができたから、結人くんの顔が見れなかった。

またベッドに横になって、体ごと結人くんとは反対方向を向いた。