なんでも器用にこなせたらいいのになぁっていつだって思う。


そんなことを考えてたら昔の遥がふと頭に浮かんだ。

……遥は足が速いとか暗算が得意とか、特別に秀でたものがあるわけじゃなかった。

だから目立つほうじゃなかったけれど、なにをするにも平均以上にできて器用にこなしてた。

小さい頃からどんくさいと言われ続けた私は、小学生ながらもそれがすごく羨ましかったんだ。

遥は、私の憧れでもあったんだ。


「あれ?残念!一番最初の試合、大野の応援できないね。試合被っちゃってる」

隣にいた澪がそう言う。

ホワイトボードに貼ってある球技大会のトーナメント表を見ると、私たち三組は男女とも同じ時間に試合があるため応援にまわれない。

「ほんとだ。あ、でもそのあとの試合だったら見れそうだね」

「じゃあ、一試合目終わったらすぐに体育館戻ってこよう」

「そうだね」

顔をあげたとき、十メートル程先にいた結人くんと目があった。

いつもと変わらない笑顔を見せてくれて寒さも吹っ飛びそうだ。

『サッカーなんてやらなくていいから、結人くんのバスケする姿をずっと見ていたいなぁ』なんて甘いことを考える。