あの日に交わした約束は、思い出の場所で。

放課後、部活が終わり結人くんを待つ。

……なんか、緊張するなぁ。スカートのすそを引っ張ってみたり、無駄に髪の毛を指でくるくるしてみたり。

とにかく落ち着かない。

味わったことのない緊張感で、じっとしていられない。


手には昨日作ったガトーショコラの入ったハート型の箱を持っている。

お菓子作りなんていう女の子らしいことは滅多にしないんだけど、さすがに今回ばかりは何度か練習した。

なんでも「最初が肝心」っていうしね。失敗したのなんて渡せない。


心を落ち着かせるために、窓に目を向けて冬の空を見上げる。真っ暗だ。


バレンタインデーかぁ……

ぼーっとする時間があると、すぐに昔のことを思い出してしまう。小学生の頃は毎年当たり前に遥にチョコを渡していた。

別に小学生だから、渡してどうこうとかはなかったけど。

ただ、素直に好きだったから渡してた。


人に素直に好きだと言えたあの頃が、どれだけ貴重だったかを思い知る。


……今はもう、簡単に「好き」だなんて言えない。


そういえば遥、ホワイトデーは毎年律儀にクッキーをお返しにくれてたな。

勘違いじゃなければ、遥もきっと私のこと……