あの日に交わした約束は、思い出の場所で。

三学期が始まって何日か経ったある日。

窓側の席だった私がふと外に目をやると、青いマフラーを巻いた遥の姿があった。


「……遥だ」

登校してきた遥がマフラーに顔をうずめながら昇降口に向かって歩いている。

まるで王子様が現れたかのように、周りの女の子たちが集まる。

こんな光景、少女漫画の世界だけだと思ってた。


幼馴染がこんなに人気者になっちゃうなんて、七年前は想像もできなかった。

切なくて、泣きたい気持ちになるのは、遥が手の届かないところへ行ってしまったから?

あの女の子たちの中の一人になるぐらいなら、近づかないほうがずっといい。


……私だけの遥でいてほしかったんだ。

結局いつになったって、私は遥を忘れられない。


「幼なじみくんの登場だね」

いつの間にか隣にいた結人くんが、二人にしか聞こえないぐらいの声でそう言った。

「いいの?会いに行かなくて」

「うん、いいの。あの中の一人になるぐらいなら、この距離で見てるほうがずっといい」

「そう。まぁ俺は、そっちのほうが好都合だからいいんだけどね」

朝の光が眩しいのか、結人くんは目を細めながら外を見ていた。

「なにそれ、どういう意味?」

「平田のこと、あの幼なじみくんには取られたくないってこと」


我慢してたけど、思わず吹いてしまった。

「結人くん、大真面目になに言ってんの」

「えっ、やっぱり変だった?」

結人くんもこっちを見て笑った。