あの日に交わした約束は、思い出の場所で。

「それに、幼なじみって言ってももう高校生だよ。小学生の頃みたいにふざけあったりはできないよ」

そうは言ったけれど、本音を言うならば、また遥と一緒に通学したりふざけあったりしたい。

そんなことができるなら、私はどんなに幸せ者なんだろうと思う。


「うん、そっか」

結人くんはそれ以上、遥のことは聞いてこなかった。

これ以上聞いてほしくないというオーラを、私が出してしまっていたからなのかもしれない。


——結局いつになっても雪は降り止まず、お母さんが駅まで送って行くと言い出した。

「本当に大丈夫なんで」

そう言って結人くんは遠慮していたけれど、引き下がらないお母さんに最後は根負けしていた。


「結人くん、奈央のことよろしく頼むわね」

完全に勘違いをしているお母さんは車内でも余計なことを口にする。

後部座席の隣に座る結人くんは、私の顔を見て困ったように笑っていた。

「なに言ってんのお母さん!さっきも言ったよね。結人くんはただのクラスメイトだって」

「奈央ったらね、小学生のときに大好きだった幼なじみが引っ越して以来…『ちょっとお母さん!』」

もう!遥が幼なじみってバレてるんだから。

そんなふうに言ったら、私が遥のこと好きだったのもバレるじゃんか。

「ほんっと余計なこと言わなくていいから!」

結人くんは隣で困ってるし。お母さんが絡むといつもこう。もう散々だ。

なにを言い出すのかわからない恐怖から、『早く駅に着いてほしい』そう願わずにはいられなかった。

ありがたいことに道は空いていて、十分もしないうちに駅に着いた。

結人くんはお母さんに丁寧にお礼を言って車を降りた。