あの日に交わした約束は、思い出の場所で。

「平田?」

「……うん、想ってた人はいたんだけどね。今は、好きなのかどうか、……わからないんだ」

『私は遥を好きじゃない』そう思い込むことで、手の届かないところにいる遥を諦めようとしているだけなのかもしれない。

私は弱虫だから、現実と向き合うことから逃げたいんだ。


結人くんは優しい表情で頷いた。

「……そっか。ごめんね、困らせるようなこと聞いて」

「こっちこそ、ちゃんと答えられなくてごめん」

結人くんはなにかを察したように、それ以上は聞いてこなかった。


そうこうしているうちに家が見えてきた。

「あそこが私の家」

指をさした数十メートル先に私の家がある。

「結局ストラップ、見つからなかったね」

家に着く数歩手前、結人くんが言う。

「うん、誰かが持ってっちゃったのかな」

「……あのストラップさ、誰にもらったの?」

結人くんがそう聞いてきた。

でもなんとなく、そのときは「幼なじみ」って言いたくなくて。

「……昔からの知り合い、みたいな人」

間違ってはいないけど、少し濁して言った。