——引っ越す前に、遥が私にくれたんだ。

『奈央は泣き虫だから、離れてても寂しくないようにこのストラップやる』

こんなときでさえも遥は偉そうな口調で話していた。


でも今思えば、それが遥なりの気遣いだったのかもしれない。

別れる前の、あの切なくてしんみりとした寂しい空気になるのを避けるための。


『……なにこれ?もっと可愛いのがよかった』

『文句言うな。俺とお揃いだぞ。寂しいときはこれを見て、俺を思い出せ』

そう言って優しく頭をなでてくれた。あのときの会話が思い出される。

可愛げのないことを言ってしまったけれど、遥とおそろいの物って初めてだったから、本当はすごく嬉しかったんだ。

遥はこのストラップ、まだどこかにあるのかな。

……あるわけないか。


学校を出るときはたしかに付いてた。だから落としたとしたらあの公園か、公園から家までの帰り道……

もう暗いし明日明るいうちに探しにいかないと。