それから数日後、伊南遥(いな はるか)は私の前からいなくなった。

お互い十歳。小学四年生の冬だった。父親の転勤で引っ越してしまったのだ。


遥は私の幼なじみであり、初恋の人。

そして私たちはきっと、小学生ながらに想い合っていた。

……今思えば、あのとき言った『迎えに行く』という言葉は腑に落ちない。

『迎えに行く』なんて王子様が言いそうな言葉だけれど、迎えにきてどうする?先があるのか?

……時々そんなことをふと思う。きっと小学生の発言だから、考えるほどの深い意味はなかったんだろうけど。