それからというもの、もちろん午後の授業も上の空で、先生の話なんて全く耳に入ってこない。
右から左へと、馬の耳に念仏状態だ。

授業に集中できない。こんなこと滅多にないのに。それだけ、遥が私の前に現れたことは衝撃的な出来事だった。


スマホに付いているストラップを見つめながら昔のことを思い出していた。

七年かぁ。そりゃいろんなことが変わるよな。頭では理解できていても、私は今、目の前で起きている状況を受け入れたくないんだ。

「奈央ーもう授業終わったよ」

澪に指で机をトントンとたたかれてハッとする。

「えっうそ。もう終わったの?」

「ねぇー奈央。ほんと大丈夫?その調子で家帰れるの?送ってこうか?」

澪が本気で心配してる。いけない、これ以上みんなに心配かけちゃだめだ。

「大丈夫。帰れる帰れる。ごめんね。心配かけて」

無理に明るい声色と笑顔をつくって、荷物をカバンに詰め始めた。

授業が終わったのも気がつかないぐらい、物思いにふけていた。