「遥。私、結人くんと別れたんだ」

「……さっき大野から聞いた。保健室で余計なこと言ってごめんな」

沈黙が二人を包みこんだ。もどかしいのに言い出せない。


そんな時間が続いてから、遥が口を開いた。

「……なぁ奈央。俺が引っ越す前にこの公園でした約束、覚えてるる」


——『いつになるかわからないけど、必ず戻ってくる。そしたら奈央を迎えに行く。約束する」

覚えてないわけがない。一言一句覚えてるよ。

この約束だけを信じて、七年間遥を待ち続けていたんだから。


「遥、忘れてなかったの?」

「自分から言っておいて、忘れたりなんかしないよ」

「……その約束は、まだ有効なの?」

遥は座っている身体を私の方に向けた。


「……奈央、待たせてごめんな」

「遥、遅いよ。待ちくたびれたよ」

「遅くなってごめん」

「遥がすぐ迎えに来てくれないから、もう私のことなんてどうでもよくなったんだと思って。だから、遥のこと諦めようとして……」

今まで言えなかった思いが溢れて、それと同時に涙も溢れ出した。膝に置いていた手に涙がこぼれていく。