「なんで奈央も伊南くんも素直にならないかなー。というかさ、素直になる以前に人の気持ちに鈍感すぎだよ二人。長年想い合ってるくせにすれ違いすぎだし。たった一言、言えばいいだけなのにさ」

たった一言。たった一言が言えなかったんだ、お互いに。


「まあ、くっつきそうでくっつかない、純粋で不器用な二人を見てるのも悪くはないけどね」

彩月は笑ってた。


……私たちは、なんでこんなに遠回りしてるんだろう。

「行っておいで、奈央。伊南くん待ってるんじゃない?」

私の両手を取って、優しく語りかけるようにそう言った。

私は周りの人たちに恵まれすぎている。道に迷ったときには、誰かが必ず行く先を照らしてくれる。

みんな優しくて大好きで、大切な人たちだ。


「……彩月、ありがとう」

私は彩月を一度ぎゅっと抱きしめて、あの公園に駆け出した。


——約束の時間まであと少し。

今まで言えなかった想い、全部伝えよう。