「奈央、怒らないで聞いてね」

首をかしげて、いつもの可愛さ全開の笑顔を見せた。

「告白なんかしてないし、付き合ってもいない。もちろん、『遥』だなんて呼んでないよ」

彩月の言葉を一つ一つ紐解きながら、頭の中で答えを探し出す。


……二人は、付き合ってなかった?

「たしかに、私は伊南くんが好きだった。それは本当」

「……うん」

「でも伊南くんは、最初から奈央のことしか見てなかった。私を見る目と、奈央を見る目が全然違うんだよね。四人で遊園地に行ってわかったよ」


「彩月……」

「私だってプライドがある。フラれるのわかってて、告白なんかしないよ。というよりも、あれだけ一途な人に告白する気には到底なれない」


「……奈央は幸せ者だなあ。人気者で王子様みたいな伊南くんに、あんなに愛されてて羨ましいよ」

全部、私のためについた嘘。

「途中から奈央の気持ちにも気づいて、結人くんには申し訳ないけど、二人をどうにかしてくっつけないとと思ったんだ。だってさ、どう見たって二人は想い合ってるんだもん」

彩月は遥の気持ちだけじゃなくて、私の気持ちにも気づいてた。

「だから、私と伊南くんが付き合ったって言えば、奈央が自分の気持ちに気づいて、自分自身にも、伊南くんにも向き合ってくれるんじゃないかと思ってさ。結果、作戦大成功!」

彩月と遥が付き合ったって聞かされたとき、私は一人泣きながら帰った。

その日、『私は遥が好きなんだ』と気がついた。初めて、失恋の痛みを味わった。

……こんなふうに自分の気持ちと向き合えたのは、紛れもなく結人くんと彩月のおかげだ。