「奈央、五組がやってるお化け屋敷、面白かったから行ったほうがいいよ。さっき遥と行ってきたんだけど」

展示室を出る直前、彩月にそう言われた。


「……そっか、教えてくれてありがとね。行ってみるね」

聞きたくない。彩月から遥の名前なんて聞きたくないよ。今はまだ、そう思ってしまう。

大好きな友達の幸せを素直に喜べないなんて、私は本当に最低だ。


隣で歩く背の高い結人くんの横顔を見上げた。

こんなふうに遥を想ってるのを結人くんが知ったら、私のこと嫌いになるだろうな。

久しぶりに結人くんと並んで歩いて、ただの学校行事だけど普通のデートみたいだった。

一ヶ月以上も話してなかったのが嘘みたいに、二人の間に距離はなかった。

流行りのタピオカを飲んだり、お化け屋敷に入ったり、ボディペイントをしたり。空き教室に入ってツーショットを撮ったり。

……楽しかった。結人くんといるのは楽しい。


でも、私はこんなときにでも、遥と彩月が楽しそうに二人でいる姿を想像してしまう。

結人くんの会話にも、うまく笑えていたかわからない。

遥の優しさを、他に人にもあげてるんだって思うと、胸がしめつけられる思いで、苦しくて仕方ないんだ。