「ん、なに?全然聞くよ」

「この前、親戚のおじさんから遊園地のチケットを四枚もらったのね。テストが終わったら、奈央一緒に行かない?」

「えっそうなの?私でいいなら全然行きたい」

「あっでも二人きりじゃなくて、その、結人くんと、あと……」

彩月はなかなか次の言葉を言わない。

「結人くんと?」

「あの、……伊南くんも誘ってほしいんだ」

「えっ?」

「ほら、結人くんも伊南くんと仲良いみたいだし。チケットも四枚あるから、ちょうどいいかなぁと思って」

彩月はそう付け加えた。取ってつけたような理由だった。

……なるほど、そういうことか。

彩月はやっぱり、遥との距離を縮めたいんだ。

「……高校生活最後の夏だし、そういう青春っぽいことするのもいいかもね」

「本当?」

自分の本心は、よくわからなかった。でも私には断る理由もなくて。

「うん。ダブルデートみたいで楽しそう。結人くんと遥に聞いてみるね」

「奈央、ありがとう。こんなこと奈央ぐらいにしか言えなくて」

彩月は私の手を握り、目を細めて本当に嬉しそうだった。

「遥が好き」「遥に近づきたい」、そんなことをあからさまに言ったら、他の女子から目の敵にされるだろう。

私が遥と彩月を繋ぐ立場としては、最も良い位置にいるんだ。

「いいよ。彩月にはいつもお世話になってるし。任せておいて」

大好きな彩月のため。

……それに、気心が知れた彩月と遥がうまくいってくれるなら、それほど安心なことはない。

私はこの数ヶ月で、そう思えるようになるまで成長したんだ。