「猫ちゃん、伊南家に可愛がってもらうんだよー」

私は遥に抱かれている子猫の頭を優しく撫でた。

「奈央もこの子猫の成長、たまには見に来いよな。家も意外と近かったんだし」

「うん。そうするね」

遥に頭を触られているネコは気持ち良さそうだった。


別れた後も、私は遥の背中が見えなくなるまで見送った。

また学校で会えるのに、なんでこんなに切ない気持ちになるんだろう。

もうこれから先、今日みたいに二人で会うことがないから……?


私は自分の部屋に戻るとベッドに腰掛けて、遥がくれたシロツメクサの花かんむりをいつまでも眺めていた。

……特別な感情はない。あってはいけないんだ。