あの日に交わした約束は、思い出の場所で。

「……さ、暗くなってきたし、家に戻ろうか。子猫も待ってることだし」

「そうだな。また……」

遥はそのあとの言葉を言いかけてやめた。


……たぶん、言葉の続きは「また来れたらいいな」だったと思う。幼なじみとして。

だって、私も同じことを思ってたから。

遥と結人くんは、今やクラスでもよく話す友達だ。

幼なじみっていっても所詮は男と女だ。一緒にいるのを見たら誰だって誤解するだろう。

だから、たとえ「幼なじみ」という関係だとしても、距離が近すぎるのはよくないって思ってるんだ、きっと。

遥は友達思いで優しい人だから。

……私もそう思う。

心配させるようなことはできるだけしない方がいいに決まってる。

……たとえ、遥といる時間がどれだけ楽しくて心地よかったとしても。

思い出の公園をあとにして、遥が私の家に子猫を引き取りに来た。

陽が落ちて辺りは薄暗い。

玄関のドアを開けると、お母さんがリビングから顔を出した。

「お母さん、お久しぶりです」

お母さんは最初、誰だかわかっていない様子で遥の顔をじっと見ていた。

「えぇっ!やだ〜!もしかして遥くん?またこっちに戻ってきたの?」

「はい、去年の冬にまたこっちに引っ越してきました」

「もう、かっこよくなっちゃって。奈央、あんたよかったわねー。大好きだった幼なじみが…『お母さん!そういうのはいいから!』」

結人くんのときもそうだったけど、ほんと余計なことばっかり言うんだから。

お母さんの長い話に付き合わされそうになったので、遥を早めに家の外に出した。

私はリビングにいる子猫を抱いて足早に遥の元へと戻る。

「おぉー可愛いな」

「でしょ?」

遥は手渡された猫を抱いて、優しい表情で見つめていた。

「それにしても、奈央のお母さんは相変わらず明るいな」

「ほんと、明るいを通り越してうるさくて困っちゃうよ。いちいち口出ししてくるんだから」

そんな話をして二人で笑った。