「ねね!かっこよかったでしょ?」

澪のその一言で現実に戻される。

「奈央どしたの?!そんな驚いた顔して」

澪が大きな目をパチクリさせて私を見ている。

「あ!もしかしてもしかして〜、超どタイプだったとか?!まさか、一目惚れしちゃったとか?!」

澪が楽しそうに私の肩をツンツン突いてくるけど、いつもの冗談に構ってる余裕なんてない。

「……澪名前は?転校生の」

早口になって唇が少し震えた。動揺が隠しきれていない。

「えっ?えーとたしか、イ…ナ、イナ?……そうだ伊南遥だ!名前までいっけめん!」

「……イナ、ハルカ」

心の奥底から出てきて無意識のうちに呟いていたその名前は、周りの騒ぐ声で簡単にかき消された。


……こんなに会いたいと願ってたはずなのに、いざ目の前に現れるとどうしていいのかわからなくなった。 

だってそこには、歳月という大きな壁があったから。

夢にまで見たことが現実に起こると、人間の脳内は混乱してパニック状態になるのかもしれない。