「奈央おはよう」

結人くんが大きめの黒いリュックを背負ったまま、私のところへ挨拶にきた。

「おはよう結人くん。また同じクラスになれて嬉しいよ」

「俺も。また一年、奈央の近くにいられるんだな」

「うん。よろしくね」

澪がいるのを忘れて、完全に恋人同士の雰囲気になってしまった。

「ちょっとお二人さん、目の前でいちゃいちゃしないでくれます~?てか、私がいるの忘れてませんかー?」

「なんだよ、竹内も同じクラスかよ」

「ちょっと、なによその言い方。今奈央とガールズトークしてるんだから、大野はさっさと自分の席に戻ってよね!」

また一年、この二人の平和な言い争いが見れると思うと、さっきのモヤモヤした気持ちも少し和らいだ気がした。

「わかったよ。じゃあ奈央、あとでな」

「うん」

そう言って、結人くんは自分の席に戻っていった。

戻った先が遥の後ろの席だったから驚いたけど、伊南と大野、名前の順だし当然といえば当然だ。

あの二人が仲良くなってくれたら私も嬉しいな。

もう一度、クラスを見渡した。そんなに悪い人はいなそうだ。

高校生活、最後の一年。なんとなく楽しくなる予感がして心が弾んだ。

「奈央、また一年よろしくね」

「こちらこそ。澪にまた色々迷惑かけると思うけど、よろしくお願いします」

「任せておいて!私は奈央の保護者だから」

「いや、保護者ではないよ」

「大野が奈央を悲しませたりしたら、私がぶっ飛ばしてやるんだから!」

そう言って殴るようなジェスチャーをする澪。

「澪、なに言ってんの?結人くんはそんなことしないよ」

「奈央に見せてない裏の顔があるかもしれないでしょ!」

「いや、それは絶対にないよ……」

「大野の裏の顔、暴いてやるんだから」

「なんか趣旨変わってない?」

相変わらず人の話全然聞いてないし。

でも、この人とは波長が合うんだと思う。二人でいると笑いが絶えない。

こんなに大切な友達に出会えて、また同じクラスになれて、私は本当に幸せ者だ。