冬の春


けれど、気分良く帰ろうとしているのに、それを壊すヤツが現れた。


着替え終わって裏口から出ると、征司が待ち伏せしていたのだ。


うわ! 最悪……


目を合わせないように無視する。


「おい、美穂! 話があるんだ」

「私はないわよ」

「お前がなくても、俺はあるんだよ!」


征司の前を通り過ぎようとしたとき、手首を掴まれた。


「痛っ!!」


強く握られたので大きな声を出してしまい、近くにいる人たちは一斉に私たちを見た。


「恥ずかしいから、帰ってよ!」

「恥ずかしいなら、こっち来いよ!」


左手首を引っ張る征司に対抗して、私は右手でフェンスに掴まる。


「やめてよ!!」

「来いって!」

「ヤダ!!」


綱引きしているような私たちを、周りの人たちは好奇心やシラケた視線で見ている。


「痛いから離してよ!」 

「だったら、話聞けよ!」

「痛いってば!」


周りの視線が恥ずかしかったけれど、必死にフェンスにしがみつく。

負けず嫌いな私は、こういう時に頑張ってしまう。

けれど、結局、男の力に負けてズルズルと連れて行かれた。