冬の春


仕事が終わって待ち合わせの居酒屋に行くと、幸太は来ていた。

カウンターに座り、すでに生ビールを飲んでいる。


「早かったんだね」

「営業回りで直帰にしたからさ」


私は生ビールを注文しながら頷いた。


「ねぇ大丈夫?」

「ん~ なんとか……」


ビアグラスをもてあそぶ幸太。

久しぶりに見る落ち込んだ表情だった。


「で、いつ……言われたの?」

「昼休み。お前に電話する前に」

「理由は?」

「最近、由実の機嫌が悪いって話したよな」

「うん」

「これ以上辛くなりたくないから別れたい、って言われた」

「辛いって何?」

「理由は言わねぇんだよ」


幸太はビールを飲み干して、溜息をついた。


「やっぱり、会う回数が減ってたからじゃないの?」

「それかなぁ」

「だから、『私のことはいいから由実ちゃんと会いなさい』って言ったのよ」

「だってお前、落ち込んでたじゃん」

「落ち込んでないよ。幸太が勝手にそう思ったんじゃない」

「だって、お前は強がりだから……」

「本当に強がってないんだから」

「今さら言うなよ」

「そうだね、ごめん。でも、気にかけてくれて嬉しかったよ」

「そっかぁ」


しゅんとしていた顔に、幸太らしい子犬のような笑顔が少し戻った。

幸太は立ち直りが早い。

そこが、幸太の良いところだ。


「ほら、今日はおごるからいっぱい飲んでよ」

「おう。昼飯食ってないから、食って、飲むぞ!」

「いいよ。私も食べるぞぉ」