冬の春


太陽は天辺を過ぎ、雲がちらほら現れた頃、見覚えのある人影が近づいてきた。


「やあ、こんにちは!」


また大きな声。


「こんにちは。この前はありがとうございました」

「ああ、気にしないで。元気そうだね」

「はい、元気ですよ」


と私も大きな声になっていた。


「そりゃぁ、よかった」


と太陽のような笑顔をして、隣に腰掛ける大悟さん。


「今日はどうしたの?」

「また海が見たくて。それに美味しいパンが食べたくて来ちゃいました」

「そっかぁ……。でも、パン屋は休みなんだよ」

「あ、そうか! 正月休み!」

「うん」


私ってバカだ。

家の近所のパン屋が開いているいるからって、こんな田舎の店が営業しているわけないのに。

気づかないなんて、アホだ。


「でも、よかったらパン食べていく?」

「え?」

「焼き立てじゃないけど、美味いよ」

「ああ、でも……」


と一応遠慮すると、私のお腹がグーッと鳴った。

クスッと笑う大悟さん。

聞かれてしまった。


「あっ、い、今のは……」

「アハハ、俺の腹はもっとすげぇ音が鳴るぜ」


とニコニコして言うと、すくっと立ち上がった。


「じゃあ、行こう!」


私は、恥ずかしさが一気に吹き飛んだ。


「はい!」