冬の春


「なんかあったの?」


更衣室で丹念に化粧を直しをしていると、同期の佐伯真央が訊ずねてきた。


「わかる?」

「うん。なんか、顔が恐い」


と真央はクスクスと笑った。


私は征司のことから見知らぬパン屋に行ったことを話し、真央は黙って聞いてくれた。



「征司とは別れるって決めたんだ!!」


私がきっぱり言うと、


「そう、良かったじゃない」


真央は素気なく言った。


「良かった?」

「別れて正解。征司さんて、遊び人でしょ。隠し子とかいるかもよ」

「うっ!」


私が絶句すると、真央はまたクスクスと笑った。



真央とは同じ大学だったけどほとんど喋ったことがなく、この会社に入社してから仲良くなった。

始めはキツイ性格に馴染めなかったけれど、話してみると意外とノリが一緒だった。


真央は設計部のインテリア課に所属し、チーフの座を狙っているキャリア志向なのだ。

私は仕事より玉の輿を狙っている。

趣味や男や結婚に対しての価値観が違う私たちだけど、目標がはっきりしているという点では似た者同志なのだ。



「美穂ならすぐにいい男を見つけられるよ」

「そーだね」

「お! 自信満々。さすが、元ミスキャンパス!」

「ふふーん、もちろんよ!」


私と真央は一緒になって笑った。