けれどこういった出来事があったり、病院内で子供に接している海鳳を見ていると子供が嫌いな訳ではないのだろう。

寧ろ、好きなのだと思う。  私には子供がいらないって言ったけれど、もしも相手が桜子さんだったらどうだったのだろう。

「雪穂?」

「あ、ごめんぼうっとしてた。」

考えるだけ無駄だ。  海鳳は桜子さんと結婚したならば子供を欲しがったに違いない。

作らない、と約束をしたけれど私がこんなにも海鳳との子供が欲しいのだから。 愛する人との愛の結晶は誰だって欲しい。

でもそれは過ぎた願いだから多くは望まない。今が十分幸せなのだから、これ以上望めば罰が当たる。

「ほら、あの子みたいに迷子になっちゃうよ。君はあの子程ではないけれど、小さい方なんだから」

海鳳は白い歯をむき出しにして笑いかけて、私の右手を取る。
それをぎゅっと握りながら小さく舌を出す。

「海鳳が大きいだけっ!私は普通だから!」

「小さい頃に牛乳を飲んだ甲斐があったよ。 こんなに大きくなれちゃうんだもん。」

「海鳳小さかったの?」