それもそうだ。 私だって今でも夢を見ている気持ちだ。
沢山の人に祝福され、両家の仲も良好で、こんな素敵なチャペルで夢にまで見た純白のドレスに身を包んでいる。
そして隣には大好きな初恋の人がいるなんて、言葉にしたら陳腐なものになってしまうけれど
まるで運命だ。 シンデレラストーリーだと言われるだろう。
「瑞穂さんとまた親戚の付き合いが出来ると思うと嬉しいわ」
「私の方こそ、恵理子さんとまた再会出来る日が来るなんて。
どうかふつつかな娘ですが、雪穂の事をよろしくお願いします。」
両親と互いの友人。そして職場の皆に祝福されながら手に入れた物の幸せを改めて噛みしめる。
それと同時に、焦燥感にも似た乾きも感じる。
私が彼の妻になったのも、結婚式を挙げたのも夢でも幻でもなく現実なのに
たまにふと崖の上ぎりぎりに立たされている不安を感じる。
それはきっと、誰も知らない私と海鳳の中に二人だけの秘密があるから。 ふとそれが溢れ出してしまうような焦燥感に駆られるのだ。



